私は菊地成孔さんの音楽も文章もファッションも大好きなんだけど、その中で特に好きな1冊をあげるとしたら、やはりこちらかと。
以下、Amazonから本の概要。
20世紀のカルチュアをリードするカリスマ、菊地成孔の爆発はここから始まった。
音楽、料理、映画、文学、戦争、ダンス、精神分析、愛、憎しみ、嫉妬、希望、絶望。
華麗にして饒舌な文体から、映像が、匂いが、官能が、そして音楽が立ち上がる。1999年から2002年という「時代の転換点」に書かれた文章を集めた菊地成孔のデビュー作が、単行本未収録エッセイをボーナス・トラックとして待望の文庫化。
「他になにものも、私を癒すことはなかった。しかし、この本だけが私に力をくれたのだった」(よしもとばなな氏の解説より)
そしてさらに以下、本書におさめられているショートストーリー「(パタフィジークによる)危機の数は13」からの引用。
たとえ理由などわからなくても何か惹かれるものを感じたら、たぶんあなたはこちら側の人間でないかと。
蛇荘・ビジュリーの運転する61年型のシトロエン・ダイナモがやっと青山二丁目の交差点に差し掛かった頃には、イトミ・論儒・山本はメチアール社の16歳用のキャンディーにもこのドライヴにもすっかり飽き飽きしていて服でも脱ごうかと考えていた。何だかんだ叱る人もいるけど、裸になればやっぱり何かが解決することは疑いようがないように思えた。
メチアール社のキャンディーは国連認可による600種類のフルーツ・フレーヴァ―が揃っており、年齢に応じてレッド・ペッパーの含有量が増減されている。イトミは14歳になったばかりだったが、16歳用のダブリン・クランベリーとハノイ・ライチを同時に口に入れ、音楽のリズムに併せてカチャカチャ音を立てるのがお気に入りで「わたしの小さなカスタネット」と呼んでいたが、溶けて小さくなってくると42歳用のプラハ・オレンジを追加で投入する。そうすると化学反応の魔法で何故か苦くなり、すっかり台無しの気分がまたしても彼女をうっとりさせるのだった。
「ほら、また苦くなったわ。インクそっくり。ビジュ。味わってみる?」
個人的にはこの本読んでると、SPANK HAPPY(特に第2期)が無性に聴きたくなる。
たぶんそれはこの頃の菊地さんが大概いつも「瞳ちゃん瞳ちゃん」なので、気がついたら私まで「瞳ちゃん瞳ちゃん」になってしまうからだと思う。
ちなみに「瞳ちゃん」とは、第2期SPANK HAPPYにおける菊地さんの美しき相棒・岩澤瞳さんのこと。
以下、活動休止から20年という月日を経て、奇跡的に発見された岩澤さんの最後の音源。
これがホントに最後の、彼女の歌声だそうです。
「スペインの宇宙食」菊地成孔、もう二度と戻ることの無い遠い彼岸に想いを馳せるあとがきも素晴らしいです。
私はこの本に感謝と敬意と愛情を捧げる。
■「スペインの宇宙食」菊地成孔
■ ethic SPANK HAPPY